摩天楼のそびえ立つ大都会ニューヨークの一角。毎週火曜日の夜になると、日本人ビジネスマンたちが集まってくる場所がある。

ニューヨーク・メンズ・クワイアーは、約50人のメンバーが所属する日本人男声合唱団。ほとんどのメンバーは、日本の本社から派遣されている駐在のサラリーマンだ。小さな事務所に勤務する社員もいれば、大企業のアメリカ支社長もいる。また、一家の父親もいれば、孫のいる人、両親の都合でアメリカに住む高校生もいる。様々な事情でそれぞれの故郷を後にしてきたメンバーたちだが、そんな彼らに共通していることがある。それは、歌への情熱と、遠く離れた故郷日本への思いだ。

Choir members warm up 多くの駐在サラリーマンは、子供の進学などの事情で単身赴任を余儀なくされている。彼らにとって、合唱団は、家族も友人もいない異国の地で、 同じさみしさを分かち合える仲間と過ごせる場所でもある。一方で、何十年も前に日本を離れ、アメリカに永住しているメンバーにとっては、懐かしい日本の言葉や習慣、文化にわずかな時間ながら戻ることのできるところだ。

合唱団の一年は、年末に行われる定期演奏会に向けての曲目の選定から始まる。 楽譜の読めないメンバーたちもいる。 発声練習、音とりなど、お互い助け合いながら、練習を積み重ねていく。練習の後の夕食会、特訓のための合宿、そして地域の学校や教会、病院などでのボランティアコンサートなどを通じて、一年の時が過ぎていく。徐々に交流を深め、自分たちのハーモニーを創りだしていく合唱団。

しかし、企業に勤めるサラリーマンたちは、いつ、また次はどこに転勤になるのか分からない。あるメンバーが言う、「一期一会、またそろおうと思っても絶対にそろわないですよね」。異国の大都会で出会った50人の日本人ビジネスマンたち。歌を通じて自分たちの居場 所を見つけ、仲間たちとの心の絆を深めていく彼らの素顔に迫る。